2013年11月21日(木)

まず、行政が事務局となって、地元の商工会議所や地元企業の大物による〈委員会〉がつくられます。

しかし、彼らには〈産学連携の街づくり〉がどういうことかわかりませんから、話すのは建前論と印象論ばかり、つまり素人談義です。

しかも委員会に出席するのは初回だけで、二回目からは代理が出席します。

代理では意思決定ができず、〈持ち帰ります〉と言うのがせいぜいです。

 ※本文より

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「昔・リゾート、今・産学連携」

このフレーズに接し、「なるほど、そういうことなのか」とばかりにポンと膝を打った。大型街区の街づくりや再開発に関する書を読んでいたら、上のフレーズに出くわした。そして、そうか、今は「産学連携」なのかと合点がいった。

イベントも手がける僕はかつて、全国各地で巻き起こったリゾート構想で集客の新機軸などに絡んでいくつかのプロジェクトに関わったことがある。たとえば冬場の一大リゾート地の構想では、大手ホテルの運営する一大プロジェクトにも関わったが、そのことはここでは関係ないので措く。

さて、冒頭のフレーズから受けた「なるほど」と「合点がいった」とは何を意味するのかというと、「産学連携」の次のような意味合いを説明したいがために引用したのだ。以下のカギ括弧もそうだ。

「つまり再開発で一番お金を集めやすいテーマが産学連携だから」


と、ずばり本音に切り込んだ指摘は正しく、あらがいようがない。なにしろ巨大なプロジェクトの中軸となって動き、かつプロジェクトの適否をたやすく吟味する能力の持ち主の言とあれば、素直に首肯するしかない。同様にかつては「リゾート開発」が一大テーマとなり、大きなお金が動く巨大なプロジェクトとして全国各地で計画されたのだ。

指摘はさらに続く。
「どんな案件も、“産学連携”にしたててしまいがち」で、「よく考えずに産学連携を軸にした自治体の甘い構想が後を絶ちません」


このように厳しい指摘をするご当人とは誰かというと、巨大な街区などの再開発では国内屈指のプロデューサーとして名の通る妹尾堅一郎氏(NPO法人産学連携推進機構理事長)だ。

妹尾氏といってもピンとこないだろうが、国内の再開発プロジェクトの代表事例ともいえるのが〈アキバ〉こと秋葉原であり、その秋葉原での5年間の「再開発プロジェクト」をプロデュースしたのが妹尾氏である。

その5年間の軌跡を著したのが『アキバをプロデュース』という著書だ。この書は、人が集まり、産業が育つ「街づくり」の構想から実践、そして知見の貴重な記録といえる。引用はこの著書からだ。

ただこの著書の刊行は07年11月なので、時間は経過している。が、それでも「昔・リゾート、今・産学連携」はまだ十分に生きている。

そして、これは何も産学連携ばかりではなく「あそこもやったから、うちでも」というよくある「右にならえ式」の数多くの色々な自治体プロジェクトにも言えることだ。

妹尾氏は産学連携で失敗する典型的なプロセスにまで触れている。参考になるので、少し長いが引用しておこう。辛口の指摘だが、だからこそ参考になる。「そうだそうだ」と頷くひともいるだろうし、なるほどそういうものかと得心のいくひともいるだろう。

「まず、行政が事務局となって、地元の商工会議所や地元企業の大物による〈委員会〉がつくられます。しかし、彼らには〈産学連携の街づくり〉がどういうことかわかりませんから、話すのは建前論と印象論ばかり、つまり素人談義です。しかも委員会に出席するのは初回だけで、二回目からは代理が出席します。代理では意思決定ができず、〈持ち帰ります〉と言うのがせいぜいです。」

「それでも事務局がしっかりしていれば、まだ話が進められるのですが、そのほとんどは“にわか勉強”。なんとか任期をしのごうと思っている役人的処世術が頭にちらつきます。とはいえ、彼らは一応世の中の先進事例を等を調べます。出張ができるからです。」

「しかし、そんな事例をヒアリングに行っても、良いことしか聞かせてもらえません。なぜならヒアリング先の自治体だって、〈うまくいっていない、こんな問題を抱えて困っている〉なんて、にわか勉強程度の他の自治体に言うわけがありません。それなりのヒアリングで良い事例として持ち帰ってもらえれば、逆に、〈他の自治体のお手本にもなるように評価されている〉と宣伝材料に使えるのです。」


そういう「結果としての馴れ合い事例」が多々あって……そうこうしているうちに時間が切迫してきて、市長や知事があわて出す。

「選挙が近づくからです。なんとしても、再開発を進めなければなりません……。」

その結果、「こうして、コンセプトも何もないままに、ただ産学連携の地域開発や街づくりをしなければならなくなり、大学や研究開発機関を集めようとします。とっても有名どころの誘致なぞ、今さらできるわけがありません。」

結果として、「産学連携」に知見のない地元の大学の先生などが委員会のメンバーになり……うまくいかなくなる。
「それでも政策の失敗はなかったはずだという〈行政の無謬制〉神話が頭をもたげてきて、結局は税金の垂れ流しに終わります。」

「できあがったのはコンセプトも何もない、ただの『産学連携雑居ビル』だった、ということになる。そのようなビルが全国各地に見られる……。」


よくも言ったり。まさにその通り。誰もが思い当たる節がある。
話を戻すが、かつてのリゾート計画もそうだった。そして誰もが思い当たるというのは、自治体が仕掛ける色々なプロジェクトで見られることだ。

※まだ続きますが、ひとまずここで。

  頭の中ではこの後に、僕自身が関わったり取材したりした素材をもとに
  この3倍ぐらいの書き込みを想定しています。

 ですから、続きます。

  ただし本業の原稿仕事がありますので、ひとまずそっちへ。
  仕事の原稿が思うようにはかどらない。それで気分転換で、思い立ってこれを……。

 地域開発や、地域振興関連の素材ですが、それも映画絡みの。
 でも、それを読んでもらうように構成している時間がない。
 で、第一人者の意見を貼りつけた以上、僕のは蛇足かなとも……。