池上さんも使ってる
ニュース報道「取材ポイント3原則」
これでグーンと、説得力アップ!
「どんな大事件が来ても恐れることはないからね。
『本記』『解説』『雑感』。
これだけでいいんだ。
飛行機が落ちようが、
内閣が倒れようが、
本記・解説・雑感を取材して書けばいいんだ」
上記はWeb上のジャーナル誌で読んだ
福島第一原発事故の関連記事の中にあった。
大項目形式というか、
上記のように大きな項目三つにわけて取材すれば、
それで十分なニュース記事が書ける、と。
そう語るのは、朝日新聞の元記者だった
烏賀陽弘道(うがやひろみち/珍しい苗字だ)さん。
新聞記者になりたての頃、
ベテランの先輩記者から教わったという。
「本記」とは5W1Hを中心とした「何があったのか」
というニュースのコアの部分。
「雑感」とはニュース現場の状態、状況の描写で、
「近所の人の声」などがその代表的なもの。
「解説」とは専門家に取材して記者が出稿したもの。
で、あの池上彰さんも、まったく同じ事を
ご自分の著書で言っている。
その箇所を転載しておこう。(これもネットから)
「本記」は、※一部に引用者の加筆
いつ、どこで、誰が、どのように、何をした、
という「ニュースの基本情報」が書かれたものです。
「雑感」は、
特に大事件や大事故の際、
現場が「どのような状態だったか」を描写するものです。
「解説」では、
その「出来事の背景、過去の歴史、
今後の見通し」などを記者が説明しています。
つまりこの三つの大きな項目は、
「ニュース報道」である限り、
新聞もテレビも雑誌も
原則として守られてきたものとのこと。
今回の大震災報道も福島第一原発の事故報道も
新聞社内部の編集デスクなどは、
この三本柱に沿って記者のチームを編成している。
ぼくはライターを生業として20年になるが、
このことは今日の今日まで知らなかった。
かなりの数のライターや文章に関する本を
勉強のために読んだつもりだけど、
そういうことに触れている本はなかった。
知っていれば、
これだけの重要な方法論は憶えているはずだから。
もっとも、「ニュース報道」ではなくとも、
つまりぼくらのようなライター稼業でも取材仕事を重ねていれば、
ある時点で、このようなポイントは
手法として自ずと分かってきて身に付くもの。
ただしそのポイントを三つの概念に分類して、
「原則」として把握しているかどうかということは、
ましてや新人が知っているかどうかは、
しつこいが、とても重要。
この原則を知っているかどうかで
記事や文章の内容に大きな違いが出てくるし、
余計な苦労もしなくて済む。
ぼくの場合だと、
まったく一人で何も知らないところからスタートした
ライター稼業だったから、初めのうちは苦労した。
文章は書けても構成がわからない。
編集者を納得させるだけの構成に
まとめあげられるようになるまでは、
結構な時間を要した。
そんな思いがあるから、
「へえ〜、そんな便利な手法があったのか〜」となったのだ。
それから烏賀陽さんは、
記事の中で記者クラブから出てくる発表(本記)は各社横並びの
同じ内容で多様性が乏しいとして、
この原則の負の側面にも触れている。
いや、むしろ負の側面を報せたくて書かれた記事だ。
興味ある方は、
「画一的な報道姿勢」「美談記事のつくりかた」等々に
触れているので一読を。
烏賀陽さんの指摘している負の側面をもっと掘り下げると、
もしかしたら記者クラブ制度や日本のメディアの報道姿勢の
よりディープな負の部分にたどり着くかもしれない。
たまたまぼくは今、
江藤淳の『閉ざされた言語空間』を読んでいる。
副題が「占領軍の検閲と戦後日本」である。
まだ読み出しだから無責任なことはいえないが、
終戦後の米軍占領下に米軍によっておこなわれた
メディアなどの検閲に触れている。
どうも、日本のメディアの歪みは、そのときにはじまり、
それが今日まで続いているのではないか、という声があり、
それを知りたくて手にしたのだ。この件は別の機会に触れたい。
ところで烏賀陽さんだが、ぼくはまったく知らない人だけど、
ググッたら、ある損害賠償訴訟で「5000万円」を請求されていた。
訴訟を起こしたのは、音楽ヒットチャートのあのオリコンだった。
これは、オリコンの言論封殺のための恫喝とも言える訴訟だ。
結果は烏賀陽さんの勝利。
烏賀陽さんがある記事の中で
オリコンにとって「耳の痛いコメント」を発しており、
それに対しての損害賠償訴訟というわけだ。
本来なら出版社も訴えるべきなのだが、
あろうことか、フリーのライター1人の個人だけに絞って
巨額の5000万円を請求したというわけだ。
で、名前は知らなかったけど、
その訴訟のことは知っていた。その当事者だった。
誠実で良い仕事をしている書き手だ。
2011年5月20日(金)