玉川上水(武蔵野市)の事務所から…

ライターの仁です。企業広報分野でIR(Investor Relations)などの仕事をしています。折々の、あることないことで、気にとまったことを発信します。

September 2010

中国のレアアース(希土類)による圧力手段  「あと1年の命」

9月28日(火)

このブログで前回触れた中国ウオッチャーの柯 隆(カ リュウ)氏が、今日28日の日経の2面に載っている。氏の著書『チャイナクライシスへの警鐘』の広告に氏自身のフォトが載っているのだ。

広告には、2012年に「チャイナクライシス」こと、「中国経済が減速する」とある。なぜ2012年なのか……その真相は著書に譲る。

それでは、今回分。産業界では今回の「尖閣衝突」による中国からの圧力によるレアアースの輸入停滞(通関圧力など)に、「中国依存のリスク鮮明」とばかりに、中国への過度の依存体質(国内使用の約9割)について今後の資源戦略の見直しが急務になっている。

ぼくは企業広報分野の仕事を主に手掛けており、以前、非鉄大手の広報の仕事に関わったことがある。レアメタル、レアアースなどという言葉が一般化する前のことだ。そういうことから、産業用の鉱物資源については多少の知見もあり、それなりにそっちの分野の動きには興味を覚えるのだ。

※レアアース(希土類)とは、レアメタル(希少金属)のなかで希土類(17元素の総称/17種類の異なる鉱物)と呼ばれる一群の元素(鉱物)のこと。

※日本が世界最大のレアメタル消費国である以上、逆に言うと、世界的にみれば、相当量のレアメタルが国内に蓄積されているということでもある。

先週のWBS(テレビ東京)がいち早く、日本のレアアースの輸入業者にインタビューしていたが、その時の業者の発言で、頭に残ったのは次の点だった。

「中国のレアアースの輸出の5割以上が日本向けで、正直なところ、日本への輸出が滞ると、中国の輸出業者が困ることになる」

ということはつまり、中国側もギリギリのところで日本に圧力を掛けているということなのだろう。そしてこの数日の日経を読むと、レアアースを介しての圧力はまさに「今しかできない」ということがわかった。

産業界では個別の企業が数か月から半年ぐらいのレアアースの在庫を保有しているので(たとえばトヨタなら半年は生産に影響がない)、いきなりの影響はないが(市場価格の高騰はある)その先がやはり懸念される。

ところで「今しかできない」と上述した。実は今、世界各地でレアアースの生産が始まろうとしているのだ。(日経9月26日より)

たとえばベトナムでは日本が発見した鉱山があり、日本は今その採掘権を交渉中だし、アメリカでは以前世界最大だった鉱山の操業再開が進んでいる。オーストラリアの鉱山では採掘が始まろうとしている。

世界の各地で生産が本格化するのは2012年。つまりこの年にはレアアースは潤沢に供給される見通しなのだ。

ということは、中国の市場支配はあと1年というところ。そう、中国がレアアースを使って圧力を掛けられるのは残り1年なのだ(特に日本には)。外交の武器として、今しか使いようがない、ということだ。

ハイテク日本の生命線であるレアメタルとレアアース。これらの用途はその情報自体がノウハウで秘密。企業秘密の最たるものだ。

第一級の「中国ウオッチャー」の視点を、勝手に貼り付けてみた 中国理解にどうぞ!

2010年9月26日(日)

エコノミストの伊藤洋一氏の最近のブログ(中国レポート)を読んでいて、さらに氏のツイッターから中国人の柯 隆(カ リュウ)氏を知る。柯氏は富士通総研経済研究所の主席研究員で、来日22年になる中国ウオッチャー。

伊藤氏の中国レポート(たとえば日本では「渋滞」と言えばせいぜい数時間の話だが、中国では、約1カ月にわたって100km以上に及ぶ大渋滞が発生するという話しなど)も中国の現状なりが分かって面白かったが、7月からはじまった柯氏のツイッターを読んでいて、柯氏の目から見た日中の比較や、中国の現状や実態がわかって面白いので貼り付けてみた。

柯氏のツイッターはさほどの量ではないので最初から読んでみたが、最近の箇所をぼくなりにおもしろいと思われる箇所をピックアップして時系列で以下に貼り付けてみた。今現在の中国を知るには格好の情報や視点があふれている。

通常、人様の文章を貼り付けるだけはしないのだが、ツイッターにはリツイートの機能があるので、許容範囲と勝手に解釈して貼り付けてみた。それほど知られていない人だが、今回の日中の衝突で、一気に柯氏はメディアに登場することになるのではないか。中国の漁船が日本の海保に拿捕されたところからはじまる。


■以下は柯氏のツイッターから貼り付け。(時系列だから、より下の文章が先の日付になる。9月13日分から)


• 日本には、国内問題がないから、仙谷さんの記者会見も菅総理のぶら下げ取材ものんびりしていた。今朝、河北省で4人の日本人が拘束されたのを受けて、はじめてあわてた。 2010年9月25日 0:10:43 via web

• 普段は極めて穏やかな温家宝はUNで偉い興奮していた。船長の無条件解放を求めて。ソマリアで海賊に拉致された船の乗組員が複数に上ったが、興奮しなかった。理由は、今回の件が国内に飛び火することを警戒しているからである。 2010年9月25日 0:08:49 via web

• 今回の事件も、中国国内でアメリカの仕業ではないかといわれている。従来の日本ならここまで硬直的な態度を取らなかったはず。鳩山政権の親中姿勢を正すために、アメリカは日本に今回の件を指示したと。いかにも国際政治小説のようだが、注視しておいたほうがいいトレンドだ。 2010年9月25日 0:02:38 via web

• 日中間に問題が生じた場合、日中が話し合って解決すべき。アメリカに仲介を頼むと、永遠に反目する恐れがある。これは、中国国内で識者の間で台頭している反米感情である。 2010年9月25日 0:00:17 via web

• 中国国内では、とくに識者のレベルで今回の件を通じてア メリカに対する警戒を強めている。それはまったく無意味のことではない。アングロサクソンの連中が入ってくると、不幸なことしか起きないとみられている。 パキスタンとインドはそうである。パレスチナとイスラエルもそうである。 2010年9月24日 23:57:43 via web

• 「民意」に任せると、国際紛争は解決されない。重要なのは先見の目のある政治的リーダーの知恵。残念ながら、現在の日中にはこうした立派な方はいない。十分なリーダーシップの取れない者がリーダーになっているから、不幸が起きる。 2010年9月24日 23:55:11 via web

• おそらく東アジア共同体構想や戦略的互恵関係は単なるまぼろしだった。これっぽちのことも日中が乗り越えられない。外交的に抗議する前に、ホットラインを通じて話し合うなり、事前通報するなり、相手の立場をできるだけ尊重するなりのことができないのか。 2010年9月24日 23:53:18 via web

• 午後、某新聞社の電話取材に答えた。経済への影響についてきかれたが、短期的に影響あるが、問題は長期化しないので、心配ない。それよりも国民感情の悪化が心配。 2010年9月24日 22:07:17 via mobile web

• やっぱり日本人は喧嘩に弱いね。喧嘩する意識がなければ、先日勾留延長せず、釈放すべきだったのでは。 2010年9月24日 19:33:52 via mobile web

• これから船長が釈放されるが、日中双方が反省すべきは日中友好の絆がなぜこんなに脆弱だったのか。有事のときこそ信頼。やはり同床異夢なのか。 2010年9月24日 19:30:59 via mobile web

• アメリカ人の記者が北朝鮮で捕まったとき、クリントン元大統領が訪朝し、人質を連れて帰った。今回の問題を解決するには、江沢民前主席が来日するのは方法の一つかも。 2010年9月24日 12:10:12 via mobile web

• スーパーや家電量販店に行ってみたが、日本製品の売れ行きは好調。ネット上で日本製品の不買運動を叫んでいる動きはただのパフォーマンス。最近、温家宝首相は次の談話を発表した。中国に投資し、中国で作られたものはすべては中国製品。そうした企業も中国企業。その通り。 2010年9月24日 8:45:23 via web

• 日系のホテルと日系のデパートにいっても普段と変わらない様子。アポ先もキャンセルされることなく、とても親切に対応してくれた。今回の出張は病院視察がメイン。日系のクリニックもヒアリングしたが、まったく平静。政治と経済が分離されている点で小泉時代と異なる。 2010年9月24日 8:41:26 via web

• 今回の件の背景にアメリカの動きがあるとは思わないが、真相究明が十分になされていないため、これからどんどんいろんなデマが出てくる。幸い、両国の人民のレベルをみると、いたって冷静。 2010年9月24日 8:38:19 via web

• 中国国内では、今回、日本政府が硬直的な態度を取るようになったのは、アメリカの仕業ではないといわれている。すなわち、鳩山時代、脱アメリカと親中の路線を鮮明にした。それはアメリカにとり不愉快なこと。今回は、アメリカは日中の間を悪くする仕業によるもの。 2010年9月24日 8:34:57 via web

• こういうとき、ジャーナリズムの役割が期待されるのだが、表面的なことしか伝えていない。重要なのは真相解明と問題解決の出口の模索。そのために、ほんとうの専門家によるディスカッション。マスコミはちゃんとした役割を果たさなければ、憶測とデマがはやる。 2010年9月24日 8:31:55 via web

• こういうときこそ、政治家のサイズが試される。両国の政治家のつばぜり合いがこのまま続くと、ことがさらに大きくなる。上海で、「民主党のなかに中国窓口がいるか」と何回も知り合いに質問された。答えは一つしかない。「ない」。 2010年9月24日 8:24:47 via web

• かつて人民党の時代なら、長老議員は北京を訪問し、ことが大きくなる前に、和解する。しかし、民主党にはこうした長老が存在しない。小沢氏の北京訪問も考えにくい。菅氏に負けたばかりで、本心では協力するどころか、ざまミロという感じだろう。 2010年9月24日 8:22:12 via web

• このままこじれると、胡錦濤はAPECを欠席、副総理級の閣僚(戴秉国?)が代理出席となると、さらに大きなマイナスが予想される。 2010年9月24日 8:19:53 via web

• 中国政府は今回の件の早期解決を望んでいるはず。一つは万博の最中に何かあると大きなマイナスとなる。二つはこれから党大会が開かれ、平穏な社会情勢が望ましい。三つは、横浜で開かれるAPECに胡錦濤が出席するため、そのための雰囲気づくりも重要。 2010年9月24日 8:17:54 via web

• 今回は、犠牲者が出ておらず、日中双方にとり重要なのは今後このようなつまらない事件が起きないための対話を早くしたほうがいい。 2010年9月24日 7:57:51 via web

• 今回の尖閣諸島(中国名:釣魚島)事件をみていると、日中双方はあの海域の帰属を争っているのではなく、船長の処遇を巡る神経戦になっている。船長を簡単に返したくないのは日本のスタンス。早く解放してほしいのは中国の要求。 2010年9月24日 7:56:14 via web

• 今の中国人はツイッターとYOUTUBEにアクセスできないが、普通の海外のサイドなら大抵アクセスできる。北朝鮮じゃないからね。一応憲法上、知る権利が保障されているからね。 2010年9月24日 7:53:08 via web

• こうした情報統制は中国人にとりすでに慣れている。自分が小さいころ、70年代、新聞やラジオなど毎日説教だらけで、つまらない。どうしたかというと、自分で短波ラジオをつくり、深夜にVoice of Americaをイヤホンで聞いていた。 2010年9月24日 7:50:53 via web

• 伊藤洋一さんはチベットに行かれた際、ツイッターをやっていらっしゃったが、今回、上海で知人らに聞いてみたら、彼らはツイッターにアクセスできないといわれた。ただ、北京大学の教授はファイアウォールを越えるソフトをもっている。うえに政策あり、下に対策あり。 2010年9月24日 7:49:04 via web

• 日本に来てすでに22年経過した自分にとり、こうした祭 日にあまり実感わいてこない。昔、こうした祭日のエレメントとして、休み、ご馳走と新しい洋服を買ってもらえること。しかし、今の自分は、祭日は休めな い。ご馳走といってあまり食べない。新しい洋服は自分で買うようになった。 2010年9月24日 7:44:42 via web

• 中秋節は家族団らんの祭日で全国休み。習慣として月見をしながら、月餅を食べる。友人から月餅をいただいた。でも小さいころ、月餅をすこし食べたが、今はあまりおいしいものと思わなくなった。甘すぎ・脂っこすぎ。 2010年9月24日 7:41:17 via web

• もっとも、万博の日本館は依然高い人気。待ち時間は4時間。ほんとうに反日なら、日本館への入館がボイコットされるだろう。今回の件につき、中国国内はきわめて冷静。その背景に、政府が抑えていることがある。それに対して、台湾と香港の活動家は激昂しているようだ。 2010年9月24日 7:35:22 via web

• 昨年、日本に招待した中国人エコノミスト茅于軾先生は、領土問題を政治家に任せると、なかなか解決されないといわれた。なぜならば、政治家が世論に左右されるからだ。また、世論は行き過ぎがち。80歳のエコノミストは両国が冷静になるべきと呼びかけている。 2010年9月24日 7:32:41 via web

• 中国人船長の拘置延長が時事速報で知り、中国国内では、普段と変わらない様子。今回の出張は成田→上海の往復がいずれもエコノミーからビジネスへアップグレードされた。エコノミーはいっぱいだからといわれた。確かに、中国人ツアーでエコノミーはいっぱいだった。 2010年9月24日 7:29:09 via web

• 上海出張していた。中秋節(十五夜)にあたり、道は駐車場。帰る日の朝、カルフールに買い物にいったが、店は日本総領事館のすぐ近く。道路のいたるところ、警官だらけ。中国政府の警戒ぶりは明らか。万博の最中に、反日デモが起きたら、とんでもないことだからね。 2010年9月24日 7:25:46 via web

• 日本人は逆。最初に手に入れた材料(証拠)を並べる。多くの場合、不充分と判断した場合、結論に至らなかったと撤回する。だから日本人の議論は物別れが多い。中国人は何らかの結論を得ないと別れない。 2010年9月15日 14:30:21 via mobile web

• 一般的に中国人が議論するときの習慣としてまず結論を先に出しておく。それから、1、2、3とその結論をサポートする材料を探して来る。たとえ不充分でも結論を簡単に撤回しない。 2010年9月15日 14:25:21 via mobile web

• もうじき中秋節。一家団欒の日。日本では、月見団子を食べる習慣だが、中国では月餅を食べる。昔はそうでもなかったが、近年、月餅を贈り物として日本のお中元のようにお世話になった人にプレゼントするのが盛んになっている。 2010年9月15日 2:04:02 via web

• 年に14-15回に中国に出張するが、ほとんど故郷の南 京に立ち寄らない。古き良き南京はほとんど残っていないから。孫文のお墓、中山陵の周辺はこのうえなき森がしげ、景色の美しいところ。しかし、この間、車 で通ったら、全部フェンスで囲まれ、殺風景だった。孫文は天国で怒っていると思う。 2010年9月14日 9:51:38 via web

• 週末からまた上海に行くが、万博によってひどい交通渋滞。空港からホテルまでの時間、ホテルからアポ先までの時間、まったく読めない。中国の主要都市はすでにバンコク化している。ただ、仏教徒のバンコク市民と違って、社会主義者の落ち着かなさはいっそう深刻化する 2010年9月14日 9:48:48 via web

• 中国にとってこれから政権交替の多事の秋に入る。だからこの問題が大きく発展してほしくないはず。 2010年9月13日 15:44:34 via mobile web

• 中国のメディアによると、日本の巡視船が漁船を体当たりと報じられ、日本の報道と逆。子供のケンカを解決するには第三者による調査で一目瞭然。 2010年9月13日 15:30:05 via mobile web

• 中国の漁船が拿捕されたことについて、中国の国務委員(副総理)は日本政府に政治的決断を要求。中国語のミニブロッグで「日本では政治は司法に介入できない」と知らせてあげた。 2010年9月13日 15:27:15 via mobile web

以上です。

フォーサイスの傑作小説を読む。戦後65年、現代にも生きる、あの悪魔(ナチ)の思想と組織活動

2010年9月6日(月)

フォーサイス『オデッサ・ファイル』を読了。
紛うかたなき傑作。


テーマが凄いというか、素晴らしいというか――ユダヤ人虐殺を手掛けた元SS(ナチ親衛隊)だった高級将校の戦後の逃亡(偽名を使って普通の暮らしをしている)を追う物語なのだが、


必然的にそこには収容所でのむごいユダヤ人虐殺の様子と、
その虐殺にかかわったSS高級幹部たちの姿と、


彼らの戦後の、逃亡しつつ(復活を期して)組織活動している姿までもが虚実織りこまれて濃密に描かれている。


組織活動とは何かというと、彼らは戦後、

冷戦中の西ドイツのあらゆる層にSS隊員だったことを隠して一般の生活者として紛れ込み、


彼らの思想や理念にもとづく活動を続けていたことを言う。


ちなみに、彼らの活動資金は莫大だ。


ぼくも戦後の彼らの稼動資金がどこから出ていたのか、
興味をそれほどもっていなくて分からなかったが、


要するに、虐殺したユダヤ人から巻き上げた金塊や宝石、お金などに依るものだ。


そして驚いたことに、今月3日の日本の各新聞が、


西ドイツの中央銀行の理事(65歳)が「ユダヤ人差別発言」を行ったことで、
解任の提案がなされているというニュースを報じている。


65歳ということは、この理事がSSだったということはないものの、それでもSSの活動を、
つまりはナチス支援、ヒットラーの思想を支援する考え(ネオナチなど)が、


現在でもドイツには根強く存在していることをこのニュースは示しており、
まさに、この小説はそのあたりの基礎的な知識の理解に役立つ。


実際、冷戦中の西ドイツには数多くのSS隊員が、
密かにその活動をおこなっていることは自明のものとしてあり、


そのあたりの動きをこの小説は、テーマとして選んでいるのだ。


だから、なんというか、半端なテーマ設定ではないと言えるし、
単なるエンタテーメント次元の作品でもないといえる。


きわめて重厚すぎるテーマの選定であり、
また物語もテーマに決して負けてはおらず、
その意味でも凄い(素晴らしい)といえる。


それを成立させているのはひとえに取材力にある。


それから、もちろんフォーサイスだから、
ナチスに同情的なアラブ諸国(特にエジプト)との


政治的対立の関係(ナチスはアラブ諸国や南米に数多く亡命)なども描かれている。


時代背景は戦後から、1970年前後。


これを読むと、ナチ親衛隊の活動の頃〜戦後〜現在に至るまでの、
(イスラエルを含めた)世界の政治的構造までも理解できる。


その意味でまさにフォーサイス的な作品ともいえる。


タイトルにある「オデッサ」とは、ぼくはてっきり冒険小説やスパイ小説になどに登場する
ウクライナの黒海に面した港町の名前だろうと思っていたのだが、まったく違った。


この「オデッサ」とは、ナチス第三帝国の特別の任務を担っていた
元SS(ナチ親衛隊)隊員たちの組織名のことで、
ドイツ語の頭文字をつなぎ合わせた合成語。


つまりタイトル通りというか、
文字通りオデッサ隊員のファイルということだ。


このファイルは現実に存在し、戦後西ドイツの司法当局の手に渡っている。


この組織はSS隊員たちの逃亡を促すためにつくられた組織であり、
実際、連合軍がドイツを占領したときには、
大量虐殺をしでかした張本人たちはことごとく外国へ出て姿を消していた。


それから、この作品は
フォーサイスのデビュー作で世界中で爆発的にヒットした
処女作『ジャッカルの日』(1970年)に続く彼の2作目。


やはり大ヒットした作品だ。


西ドイツのハンブルクで車を走らせている主人公(ルポライター)が、
自動車ラジオが伝えるケネディ大統領暗殺(1963年11月)のシーンから小説がはじまる。


冷戦終了後、絶筆宣言をおこなったこともあって
フォーサイスは過去の作家になりつつあるが、


それでも「911」勃発に至る作品を書いて復活し、
その後も「ロシア」「アフガニスタン」などにかかわる作品を手掛けて
その顕在ぶりを示している――まあ、ひと頃ほどの人気がなくなったのは言うまでもない。


今夜、アフガンで解放されたフリーのジャーナリスト常岡さんが帰国するが、


ぼくらはアフガニスタンも、タリバンも、アルカイダも何がなにやらわからないけれど、
フォーサイスの『アフガンの男』を読むと、アフガン問題のことが理解できる。


並行してこの作品も読んでいるが、
ウンザリするほどの情報てんこ盛りで読むのもシンドイが、


そこを尽きぬけると、フォーサイス作品の面白さは他に類がない。
素人が国際政治の裏面を知る一番の方法は、
フォーサイスの作品を何冊か読むことにある。


フォーサイスの作品は長編で、圧倒的な取材力をベースに描かれているから、
その情報量は半端ではなく、


ひとによっては、うんざりして投げ出したくなるほど執拗に書き込まれているものもあり、
もう十分だよ、と言いたくなる。


しかもその書き方が、
まるで新聞の膨大な解説記事を
読んでいるようで(たとえば沖縄の普天間基地移転問題を
そっくり解説してしまうようなボリュームだ)気軽に読むというわけにはいかない。


反面、圧倒的な取材力ならではの、
虚実織り交ぜたストリー構成と執拗なまでの記述がまた素晴らしいのだが――。




小沢一郎の出馬表明に見る、小沢流「話術」

9月1日(水)

昨日(31日)夕方の民主党本部での菅首相・小沢一郎会談のすぐあとに、小沢一郎の代表選への出馬表明があった。その様子を報じるNHKのテレビを見ていた。

小沢一郎が口を開いた。ところが言ってる内容がなんとも理解しにくい。わかりにくいのだ。慎重な言い回しでの発言ではあるものの、何を言ってるのだろう、とこちらの理解力を疑ったぐらい、その話している内容がストレートにこちらには伝わってこない。

理解しにくかったのにはワケがあった。小沢一郎が「菅首相」という主語を徹底して省いていたからだ。本来なら話しの中に、「菅首相が」とか、「菅首相は」とかの主語を入れるべきなのに、あえてその主語を省いて話していたのだ。

それを指摘していたのは作家の松井今朝子だった(彼女のブログで)。松井は、やはり理解しにくかったと言いながら、それは主語を省いていたからだと、はっきり指摘していた。

松井によれば、そこには巷間言われるところの小沢一郎の東北人の「話しべた」とはまるでことなる「肝心のことをわざと言わない」話術を心得ているとのこと。

さすがに鋭い指摘だなと思った。で、松井の結論は別のところにあるのだけど、それはひとまず措くとして、ぼくが興味を持ったのは、あの短い出馬表明を聞きながら、そこで「主語」が抜けているところまで、作家とはいえ果たして気づくものかどうかということだった。

松井今朝子は言っている。
「小沢氏の出馬表明を耳を澄まして聞けども聞けども理解しづらかったのは――」

「聞けども聞けども」とある、これって最初からずっと話しを聞きながら、耳を傾けて注意深く聞いていたにもかかわらず理解しずらかったということなのだと思うが、それとも録画を何度も見たということなのだろうか、あるいはニュースなどで何度かテレビから流れた発言内容を耳にしてということだろうかなどと、どうでもいいことながら、気になったしだい。

ところで松井の結論は、この出馬発言でもそうだが、これまでも小沢の「肝心のことを言わない話術」に突っこんでこなかった政治記者たちこそが、日本の政治を悪くした元凶だと言っている。

昨日の例でいえば、小沢一郎が出馬に踏み切らざるを得なかったという一番肝心なところをぼかしていたにもかかわらず、それを黙っていた記者たちがいたと指摘している。考えるまでもなく、この指摘は実に鋭い。

突っこみたくても、記者クラブ制度があったり、それこそ官房機密費で丸め込まれたまさに「政治と金」の記者たちには言いたくても言えないのではないかというところもあるが、まあ、ぼくが彼らを擁護するいわれはない。

ところでぼくは小沢一郎を支持する。あえて言えば、菅さんはぼくと同じ武蔵野市民だし(自宅から菅さん宅まで自転車で5分)、菅さんの地盤だから、実はこれまで彼を支持してきたが、首相になってからの菅さんには失望した。まあ、菅さんではいくら現職総理とはいえ、相手が小沢一郎では端から相手にならないだろう。

評論家の佐高信が今回の代表選について、「毒があるが、力のある政治家と、毒はないが、何もできない政治家の戦いである」と言っている。言うまでもなく、ぼくは前者の政治家を推す。
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